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特集

 

2015年2月10日 『あしたになれば。』三原 光尋監督インタビュー

ストーリー

大阪府南東部に位置する南河内市。ぶどう畑に囲まれた自然豊かな郊外を舞台に、高校2年生の大介(小関裕太)は、夏の甲子園予選に負けたことが原因で野球部から足が遠のいてしまう。夏休み、暇を持て余す大介だったが、ひょんなことから友人の元(葉山奨之)や、健二(小川光樹)、昭吾(山形 匠)、そして隣の女子高に通う美希(黒島結菜)と玉子(富山えり子)の6名で、地元の町おこしのためのグルメコンテストに出場することになる。当初は美少女の美希が目当てで参加していた大介たちだったが、徐々に料理の奥深さに気づきはじめる。同時に、大介と元が抱く美希への思いも強くなっていく。そんな中、美希が突如練習に来なくなる。いったい美希が抱える悩みとは・・・。果たして彼らは無事にコンテストを迎えることができるのか。そして大介、美希、元の三角関係の行方は---。

スタッフ

監督:三原光尋 脚本:三原光尋 小森まき 企画:村田亮 プロデューサー:吉見秀樹 撮影:鈴木周一郎 音楽:きだしゅんすけ

出演

小関裕太、黒島結菜、葉山奨之、小川光樹、山形匠、富山えり子、赤間麻里子、清水美沙、赤井英和 ほか

【プロフィール】

三原 光尋(みはら みつひろ)監督
1964年、京都府出身。大阪芸術大学芸術学部に在学中から映像制作をはじめ、地元関西を舞台に数々の作品を制作。1994年、大阪市が文化の発展に寄与した者に与える「咲くやこの花賞」受賞。主な代表作は、吹石一恵の名を一躍広めた『あしたはきっと…』(01)。上海国際映画祭で最優秀作品賞と男優賞(藤竜也)を受賞した『村の写真集』(04)。中谷美紀、藤竜也を起用し、料理を通して人と人との絆の大切さを謳った『しあわせのかおり』(08)などがある。

(三原光尋監督=三原)

聞き手
南河内(みなみかわち)のシネマプロジェクトと称されてますが、どのようにしてこのプロジェクトが立ち上がったのでしょうか、先にこの土地を舞台にして映画を…というお話があったのでしょうか?
三原
ここは大阪芸術大学が近くなんです。僕は大阪芸術大学の卒業で、今回と同じぶどう畑が広がるその場所がすごく好きで、在校の時から自主映画をいっぱいそこで撮影していました。
それから東京に出てきて、職業映画の方にこさせてもらってから何本か撮った後、たまたま南河内に戻った時「ああ、この風景変わってないな、いいな…。映画、映画と思ったけど東京で何を無くしたんだろう。この場所でもう一回映画を撮りたい。」と思って頑張って作ったのが『あしたはきっと…』(2001年公開)という映画なんです。
この作品はすごく地元の方も愛してくれて、幸い興行的にも大きく損傷することなくうまくいった作品です。
僕は5年前から大阪芸大の映像学科で3回生の時に作る映画や卒業制作を何本か担当していて、学生たちと一緒に映画づくりをしているんです。それをやる中「あぁ、卒業してから30年近く経ってしまうのか。自分もかつてここで同じようなことをしていたな」と思って。彼らは段取りも悪いし、もたもたしているんですけど、みんな汗かいて一生懸命で…。「これ無理やで」というのを「いや、出来ます!」と意地を通してやる学生の顔を見ていると、それはそれで僕が無くしたものがいっぱいあるなぁと思って。
聞き手
(笑)
三原
現場行ってロケバスから降りたら制作に「あたたかいコーヒーどこにあるの」とか言ってるようなやつになってしまったなぁと(笑)。
聞き手
(笑)
三原
学生の彼らが、ギャラもないのに一生懸命、自分が作りたいものに誠実に向かい合っている姿を見ると「もう一回また、(前の作品から)15年経って、ここでまた映画つくりたいなぁ」という気持ちになりました。そこが自分にとっての大切な場所、常に自分の創作の原点に戻らせてくれる場所なんですね。
学生たちが映画を作っている同じ場所で、青春映画を作りたいなとふつふつ沸いてきたのがこのプロジェクトの始まりかな。お前らが作る青春モノと俺らが作る青春モノとどれだけ違うのか「オレはオレで負けへんぞ」という気持ちで挑んでみたいなと思って。だから学生のおかげというのが大きいな。

©「あしたになれば。」製作委員会

聞き手
キャストの方々も高校生の初々しさが出てましたが、実際にはキャリアのある方々なんですね。
三原
まぁ、地方のこういう所に持ってきたことが良かったんちゃうかなぁ。東京で集合して、ロケバス乗って…みたいにやると、味気ないものになったけど、こういう場所に連れてきて何にもないところで合宿みたいにしてやったことで、おのずと余計なものが取り払われていったんちゃうかな。
聞き手
今回のキャストを選ばれる際はオーディションをされたんですか?
三原
この作品に企画として携わっている方が、若い俳優さんの情報に常にアンテナを立てていて、その情報をもとに教えてくれて、そこから会わせてもらいました。大オーディションみたいなものは、全然してないです。
聞き手
何人かの候補の方に会われて、その中から選ばれたわけですよね。選ばれた際のポイントはなんでしょう?役者さんに会われて、監督はどこを見られますか?
三原
ベースはやっぱり相性やと思うんですよ。男の子でも女の子でも関係ないですが、ドアを開けて入ってきた時の「はっ!」ていう相性感と、その人の少ししゃべると出てくる品格ですね。ちゃんと生きてる人間の持ってる品格みたいものがしっかりある人はやっぱりいいなぁというのがあります。
あと、たたずまいですね。発言やお茶を飲むことひとつでも何でも、そのときに姿勢や生き方が現れて、人柄が出てくるじゃないですか。人柄が感じられる人っていうのがいいですね。お芝居云々は後からでも何とかなりますから。
聞き手
今回はそれぞれキャリアを積まれている若い俳優さんでしたが、若い役者さんには監督は演技指導とかされるほうなんですか?
三原
この映画に関して言えば、気持ちだけでは僕も7人目のメンバーでしたので、お芝居どうのこうのと言うよりも一緒に話し合って空気感を大切にカメラでワンカット、ワンカット撮っていくことに注意しました。
固めたら固めるほど嘘臭くなっていくし、彼らも発案とかいろんなことが出来るメンバーで、言ってみたら、存在がそこに座っているだけで十分。ポスターのイメージのように並んで座っているだけでも自分のキャラクターっぽい座り方が出来るし、それで十分でした。思った以上に今の10代の子たちの方が、感性が豊かなんで、僕らがこんなお芝居こんなお芝居って言えば言うほど格式張ったつまらないものになりそうな気がしました。
聞き手
撮影は南河内に滞在しながら撮られたと思うのですが、かなり仲間の雰囲気が出たんじゃないですか?
三原
役者の男の子らと僕も合宿で一緒の所に泊まってましたからね。「はよ風呂出てきて」とか言いながら、風呂から上がったら、みんなで集まってカップラーメン食いながら世間話をしたり。そのような場は、役者同士にも、僕との間のコミュニケーションにも良かったですね。
聞き手
ふと自分の高校時代や当時見ていた映画とか、その頃のほのぼのした気持ちを思い出させる映画でした。
三原
僕とか80年代、90年代の映画が全てなんで、作ればやっぱりああいう形になっていきます。
聞き手
今の時代を生きる設定年齢に近い役者さんたちは、それに対して違和感は感じなかったんでしょうか?
三原
違和感はなかったみたいです。色んなこと話し合ってやってて、逆に「のどかなのがいいですよ」とか言ってくれてました。
もしかしたら僕が古くて、今の高校生はもっと切実な問題をいっぱい抱えているかもしれない。学生の映画を見てても、援助交際する女の子とか、手首切るとかそういうの多いから。でも実際みんなそんなこと考えてるかというとそういうわけでもなくて、のどかな人もいるわけなので。
聞き手
監督としてもちろん幅広い層に映画を見てもらいたいというお気持ちがあるとは思いますが、特に届けたい層は?
三原
今回の作品は、社会に出て都会でなんか疲れたなと思っているような人たちが、自分もあんなときがあったなぁと、映画を観ることでちょっとした栄養ドリンクのようになればいいなと思います。それは願ったなぁ。
聞き手
届きました!(笑)

©「あしたになれば。」製作委員会

聞き手
クリエイターズコミュニティに話題を移させていただきます。
キャストの方へのアドバイス、例えばオーディション時の心構えとか準備のアドバイスはありますか?
三原
養成所や、ワークショップでよく「準備をしっかりしていかんとあかんよ」と言ってます。台本来たからってシナリオを暗記物のようにして行ってもいかんよ、と。まず一番大切なのは、「この監督とこの仕事したい」っていう想いですね。想いがある子はドア開けた瞬間から本気ですもん。想いがある子は事前に何をしなくちゃいけないか考えてますよね。台本も読み込むし、役についても考えるし、出たかったら何をしたらいいか一生懸命考えるわけですよね。想いを強くもたなくちゃ、作業のようにやっててもそれは受からない。ときどき怖いのは、オーディションの時に「僕のどんな作品が好きなん?」て聞いても「すみません、まだ観てないんです。」とか答える人がいる。そらアウトでしょう。やっぱり勝ち残っていくのは、本当に好きかどうか、気持ちがあるかどうか。気持ちがある人は勉強してきますからね。その仕事に対してどれだけ想いがあるかが試されてくる。ドア開けた瞬間からその気持ちで来ている人は違う。僕らはずっと仕事をして見てきているから、そういうのが見えてくるんですよ。
聞き手
何人も見ているとおのずとわかりますよね。
三原
うん、すごい言葉の悪い言い方ですけど500人見たら450人くらいまでは、入ってきた瞬間に想いの無いのがすぐにわかる。棚から牡丹餅は絶対無いですから。
僕らも人生かけて映画を作るわけなのでね。1本作るのにお金も時間もかかるし、ともすれば数年に1本なので、それだけ想いをぶつけられる人とやりたいですよね。
聞き手
監督自身が俳優さんのプロフィールを見て何か目に留めてしまう事とかってありますか?
三原
いつも気にかけてるのが、1点何かを持っているということ。会いたいというのはその人に興味を持つことじゃないですか。特技でもなんでもいいんです。漁師をやってたとか、フードコーディネーターの資格を持っているとか、お坊さんやってたとか。何でもいいんですよ。何か1つ「お、会ってみたいな」と思うような何かがあるとその人に興味を惹かれますよね。手芸コンクール1位とか書かれたら、手芸コンクール1位の子ってどんな人生なんやろ、どんなこと思ってやっている人なのか見てみたいなと思う。人に興味を抱くわけですからね。
聞き手
最後に、このサイトを見る映画を作る人たちに何かメッセージがあれば。
三原
最近はカメラとか機材がすごくいいんですよ、デジタルでね。皆が持ってるカメラで、ともすれば十分に劇場にかけられる映画が作れるんです。
皆、ハード面やテクニックは上手いし、役者さんもすごく器用ですし、でもそこで僕らが絶対注意しなくてはいけないのが、「こころ」なんですよね。ものを作るというのは。ここになにが詰まっているかというのが心を打つものなので。何を描きたいか、何を伝えたいかってことを持たへんと、いいテクニックや機材があってもそこでグって来ないですよね。それがやっぱり分かれ目かなぁと思います。自分自身への戒めも含めて。
聞き手
本日はありがとうございました。

『あしたになれば。』
2月14日(土)より大阪「あべのアポロシネマ」にて先行公開
3月21日(土)より東京「角川シネマ新宿」ほか全国順次公開
配給・宣伝:ユナイテッド エンタテインメント
公式サイト:http://ashitani-movie.com

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