TOP 映画24区俳優ワークショップインタビュー

特集

 

2012年10月23日
「犬童一心監督インタビュー」with 映画24区俳優ワークショップ

犬童一心さん

犬童 一心(いぬどう いっしん)

1960年生まれ。東京都出身。映画監督/CMディレクター。
高校時代より自主製作映画の監督・製作をスタートし、大学在学中の1979年には自身の脚本・監督作『気分を変えて?』がぴあフィルムフェスティバルに入選。1982年には池袋文芸座の協力で『赤すいか黄すいか』を監督・製作、1980年代の自主製作映画界の代表的メンバーであった。
卒業後はテレビコマーシャル制作会社・朝日プロモーション(現ADKアーツ)に入社。CM演出家としてTV-CMの企画・演出を手掛け、数多くの広告賞を受賞。コマーシャル演出のかたわら、映画製作も継続的に行っており、1993年には、実写とアニメーションを組み合わせた短編映画『金魚の一生』を監督・製作、"キリンコンテポラリーアワード"で1993年最優秀作品賞(グランプリ)を受賞した。
翌年、長編デビュー作『二人が喋ってる。』を監督。"サンダンス・フィルム・フェスティバル in 東京 '96"でグランプリを受賞、映画監督協会新人賞を受賞する。
1999年、『金髪の草原』で劇場用長編映画監督デビュー。2003年には、『ジョゼと虎と魚たち』にて第54回芸術選奨文部科学大臣新人賞を、『メゾン・ド・ヒミコ』(05)で第56回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。その後『タッチ』(05)、『黄色い涙』(07)『グーグーだって猫である』(08)等、話題作を発表し、『眉山 びざん』(07)、『ゼロの焦点』(09)では日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。また脚本を担当した『黄泉がえり』(03/塩田明彦監督)では、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞している。 最新作は、和田竜脚本による歴史超大作『のぼうの城』。樋口真嗣との共同監督作品、自身初の時代劇作品として注目を集める。2012年11月2日、全国東宝系ロードショー予定。

★映画24区とは?

映画人がこぞって集う、東京23区にはない新しい場所。
その思いから「映画24区」と命名いたしました。
有名・無名を問わず、映画に関わる映画人=映画24区の住人がここに集うことで、コラボレートし、新しい化学反応を起こし、数多くのクオリティーの高い作品を創り出していくことを目指しています。
映画24区 http://eiga24ku.jp/

『映画業界で活躍できる役者』を目指す人に向けたワークショップ、映画24区俳優ワークショップ。クリエイターズコミュニティではこの映画24区俳優ワークショップに登壇するゲスト監督に向け、インタビューを行います。

(犬童 一心監督=犬童

聞き手
それでは最初に犬童監督のキャスティングに関して、どういった観点で選ばれているのかをお話し頂けますか?
犬童
基本的に、僕が「いいな」と思った人を出してもらってる。初めてでも無名でも、いいと思った時点でその人を信頼してる。自分のキャスティング能力を今までの経験から信用しているから。小さな役まで全部自分で決めないとダメなんだよね。まず、キャスティングが演出だから。(最新作の)「のぼうの城」は望み通りのキャスティングができたと思う。
聞き手
望み通り、ですか。
犬童
そう。出てほしい人たちに出てもらえた。

聞き手
その「望み通りの」というのは脚本に沿った、ということですか?
犬童
そうだね。キャスティングというのは組み合わせなので、主役がいたら、その周りに誰を組み合わせるとアンサンブルとして面白いかっていうのを考える。発展しそうかとか。
あともう一つは、この映画は何かがおきそうだっていうふうに思われるようなキャスティングをしたいんだよね。
聞き手
それは観客目線で、ということですよね?
犬童
この人たちが出てる、って考えた時に、面白くなってそうだなって思えること。『グーグーだって猫である』なら「あ、森三中に出てほしいな」って思って、上野樹里と森三中が並んでたら可笑しいそうだなって思うでしょ?そういう組み合わせ。あとは「全体のテンション」だね。
聞き手
全体のテンションというのは?
犬童
リアリズムが作品ごとに一本ずつ違うので、リアリズムをどの辺に設定するかということ。要は「この辺のテンションがリアルだ」、っていうラインを決めて映画を作るということ。平常心の状態が高い映画と低い映画ってあるじゃないですか。このへんがリアルだ、というのを組み立てていくんだよね。
『のぼうの城』だと野村萬斎さんを主役に決めてしまったら、周りの人のテンションがある程度高くないとダメだなと思う。そこにはまってくる人を探す。だから、相手役は佐藤浩市さんでしょ、僕の中では「マジックアワーをできる佐藤浩市」だからね。
聞き手
テンション高めバージョンの佐藤浩市さん、ということですね。
犬童
そうそう。あとは「やっぱりぐっさん(山口智充)だなぁ」とかね。そうやってテンションを揃えていくわけ。なおかつ、そうなった時に敵側の豊臣秀吉役はどうしようかってなるわけ。片方が野村萬斎で佐藤浩市でぐっさんで・・・成宮くんがいて。
そうなったら相当テンションが上がってる人じゃないと、均衡が保てないんだよ。だから山田孝之くん、上地雄輔くんが来る。みんなが意外だったんだけど、上地くんは僕がすすんで選んだんですよ。もともと僕はあまり上地くんのこと知らなかったんだけど、たまたまテレビで芝居を見てて、この子だったら大丈夫かなって思ったんですよ。甲冑の似合う身体持ってるし。
次に秀吉はどうする?ってなって。
聞き手
さらに高いところに持っていかれたわけですね。
犬童
いったい誰にどういう演技をさせたらそのこの作品のリアルな「秀吉」っていう人を設定できるのかって考えたときに非常に困ったわけですよ。で、あるときに困りながらワイドショーを見てたら市村正親さんが奥さんについてのインタビューを受けてたんですよ。それをアップで撮られてて、しかもその表情がすごく嬉しそうだったんですよ。それを見た瞬間に、この人のテンションならいけるんじゃないかって思った。市村さんには日生劇場の芝居を越えるくらいのテンションでやってくれ、っていう演出をしました。とにかく全部大声で台詞を言ってくれって頼みました。
聞き手
一番最初に犬童監督が決められるのは、やはり主役の方のテンションなんですか?
犬童
主役を決めた時点で、有名か無名かは置いておいて、キャラ、実力含めてちゃんと主役に対抗できて、ここって決めたラインまで上がってきて、その決めた「リアル」の中に入り込める人を探す。
聞き手
それを念頭に置いてキャスティングをされるということなんですね?
犬童
そうですね。ラインを維持していく、ということを意識して。あと、先に決まった人が持っている実力に対抗することができるかっていうこと。演技力で対抗するのか、個性で対抗するのかっていう2パターンあると思うんだけど、どっちかで対抗できないと。
聞き手
演技力か個性での対抗というと?
犬童
映画って別に初めての人(演技経験の無い人)でも、個性でちゃんと対抗できて緊張感を維持できるかどうかだと思うんだよね。強力な人に全く強力でない人をあてがってしまうと、強力な人が急にやる気をなくすんですよ。例えば『死に花』という作品で山崎努さんをキャスティングしてて、どうしても青島幸男さんに出てもらいたかったんですよ。これは山崎さんの持ってる演技力に、演技力だけで対抗しようとすると難しいんですよ。それで青島さんに僕が2回頼みに行ったんですよ。1回断られちゃったんですけど「やっぱり青島さんじゃないと」と思って。青島さんは演技力はないんだけど、あの人の個性だったら山崎さんも触発されるんじゃないかと思って。で、撮影始まって初日の夜に山崎さんから電話がかかってきたんですよね。「犬童、今日の青島の演技はどうなんだ」って。青島さんは台詞を覚えてこないんで。自分のこと俳優だと思ってないから。だけどやってるうちに山崎さんがどんどん青島さんのこと好きになっていって。ある時、青島さんがすごく重要な台詞を言うシーンを夜中に撮ってたんです。そしたら別に居なくてもいいのに山崎さんが来たんですよ。心配だったみたいで。で、そのシーンを撮り終わった後に(山崎さんが)立ち上がって拍手しながら、「ブラボー!」って叫び始めたんですよ。そのくらい好きになっちゃったみたいで。
結果的に青島さんは「対抗できる人」だったわけ。演技力の有無ではなくて。
聞き手
キャスティングのテンションを揃えられるというのは、犬童監督の初期の作品からずっと意識されてきたことなのですか?
犬童
ずっとCMをやっていたのですが、CMってある程度のものでない限り全部オーディションをするんですよ。1回のCMで50人から100人くらい見るんですね。なので、全然無名だけどいい人がいるのはわかってるんだよね。「この人、名前知らないけど最高!」とか、「演技は下手なんだけど最高!」とか。だからそういうのを覚えといて、のちのち映画に出てもらったりとかはしてましたね。「ジョゼと虎と魚たち」とか「いぬのえいが」くらいまではそういう人たちが出てるんですよ。でもある時期から映画が忙しくなってCMを撮る機会が減っていったのと、CMディレクターとして有名になっちゃうと、タレントものが増える。だから出演タレントが決まってる上でCMを作るようになる。オーディションをする機会が減ってしまうんですね。ジョゼの時は、全部オーディションしてたわけじゃなくて、足りない役のところをオーディションしてたんです。上野樹里ちゃんの役も、新井浩文さんの役もオーディションで決まったんですよ。そうやって映画で出会って「良かったな」って人にはその後の作品にも出てもらうようになったかな。「あいつ、この能力まだ使ってないな」とか、「今度はこういう風にいじったら面白いんじゃない?」とかいうのがある。
聞き手
オーディションの時に監督が見られるのも、「演技力」と「個性」なんでしょうか?
犬童
そうだね・・・。でもどっちかって言われると・・・どっちもなんだけど、大概は部屋に入って来た瞬間に決まっちゃうのかもしれないなぁ・・・。
聞き手
第一印象、ということですか?
犬童
そうですね。第一印象で「いいな」と思った人がいて、それで本当にその第一印象が良かったのか、っていうのを確認するためにオーディションするっていう感じかなぁ。意外と「演技する」っていうことは自分の中で「確認」になっちゃってるとは思う。入ってきて、座って、なんとなく世間話をして、それで「なんかいいなぁ」とか思って、演技する時に最終確認をするみたいな。
聞き手
具体的なイメージがあってそれに合うかどうか、っていうことではないんですか?
犬童
うーん、意外にもそうでもなかったりするんですよ。良い人が捕まったらキャラクター側をすり寄せたりする。あと、その時でなく次回に譲る場合もあるね。例えばあるCMのオーディションに無名時代の大森南朋さんが来たんだけど、すっごい良くて「この人だれ?!」くらいの感じだったんだけど、そのときは役に合わなくて。だけどその後に別のCMシリーズを作ることになったときに、「あいつがいいよ!」ってなったんですよ。だからその時々のオーディションで選んでるわけではなくて、前の時が忘れられなくて頼んだり。だからやっぱり演技力も大事だけど印象なんだろうね。江口のりこさんもそうなんだよね。とあるCMでニューハーフを使いたくてオーディションしたんだけど、彼女は女なのに来たわけ。で、その時は本物のニューハーフを撮りたかったから落とした。でも、ジョゼを撮る時に出て欲しいと思って呼んだんだよね。
聞き手
監督の中で全てが積み重ねというわけですね。
犬童
そうだね。「あいつで撮りたい!」みたいな。それでちょっと機会があると思い出してくっていう形なのかな。(演技を)見てるんだけど、見てないっていうか、行き着くところは本人なんだよね。
聞き手
新人やこれからオーディションにチャレンジする方はどういう部分を磨いていったら良いと思われますか?今のお話ですと本人の「ひととなり」というか、元々その役者が持っているものが決め手になっていくのでしょうか?
犬童
そりゃそうだろうね。普通だったら選ばないような人、失敗しそうな人でも、僕の目にはそういう人が「最高だ!」って映っちゃうんだよね。樹里ちゃんのときもみんなは「彼女じゃ撮れない」とか言うんだよね。でもどうしても僕は忘れられなくて・・・。エッチなシーンも、キスシーンもあったりするから、そんなのを中学生みたいな子にやらせたら普通は「失敗するかもしれない」と思うかもしれないけど、僕の中では「失敗するはずがない」と思ってるんだよね。「あぶない」ってみんなは言うけど、僕は「絶対大丈夫だ」って思うんだよね。
聞き手
それはやはり監督の中で脚本も含めて全て最初から考えられている、というのが大きいんでしょうか?
犬童
それはさっきも言ってた、リアリズムの「ライン」が僕の中にあるから、そこにはまってくれるのはこの人じゃないと無理だっていうのはあるかもしれないね。誰でもが僕が思ってるリアルなところに入って来れるわけじゃない。
どんな話を撮っててもどっかでバカバカしいということが重要なので、そのバカバカしさに入ってこれるかってことだね。ものすごくシリアスなものを撮っていても、どこかでバカバカしいっていう。でも意外に映画ってさ、良いって思わせるためにくだらなさをなくしてるものが多いじゃない? ずっとシリアスじゃん?バカバカしいところ一個もないよね、みたいな。でも、どんなに人殺しが逃げてても、娘が殺されても、バカバカしさがないと、自然に見れない。
聞き手
人間じゃないということですか?
犬童
そうね、人間の世界を感じない。例えば山下君(山下敦弘監督)の映画とか安心して観れるの。だけど全くバカバカしさがないものを観せられてしまうと、なんか絵空事に全部見えてしまって、あとはメロドラマにするとか、映画のジャンルにはめてくれれば大丈夫なんだけど。
聞き手
とても分かりやすくご説明頂きありがとうございます。犬童監督の考える役者の選び方について幅広く明快に語っていただきました。
犬童
ありがとうございました。

インタビュー協力:映画24区

まずはここから!

はじめての方
無料登録
会員の方
ログイン

▲ページトップへ