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2012年5月10日
シネアストオーガニゼーション大阪(CO2)事務局長の富岡邦彦さんにインタビュー

富岡邦彦さん

富岡邦彦(とみおか くにひこ)

映画プロデューサー/プラネット+1代表。シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)運営事務局長。
黒沢清監督作品の脚本などを経て、関西から出発した山下敦弘監督の『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』等、長編劇映画のプロデュースをはじめ、松江哲明監督の短編ドキュメンタリーもプロデュース。大阪アジアン映画祭など映画祭のプログラマーも多数担当。香港、 韓国、中国、ドイツなど海外の映画祭や若手映画監督とも親交が多数有り。最新プロデュース作品は万田邦敏監督の『面影』(大阪ヨーロッパ映画祭で上映)。上映室 PLANET+1の代表。関西を中心に活躍する若手映画監督の育成などにも努めている。

★シネアスト・オーガニゼーション・大阪(CO2)とは?

2004年、大阪市の映像文化振興事業の一環として、単なる映画祭ではなく「映画づくりをサポートする映画制作のエキシビション」というコンセプトでスタート。オリジナル企画を募集し、助成金50万円で制作に入る監督を数名を決定。制作・上映展を行うことで、新人映画作家の育成をサポートする。2005年に第一回目の上映展を開催、今年で8回目を数える。関西のインディーズ映画界の「今」が分かる上映展として注目を集めている。

2012年から大阪アジアン映画祭の中の1部門になり、『大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門』として再始動。2012年の助成作品は、梅澤和寛監督『治療休暇』、安川有果『Dressing Up』、常本琢招監督『蒼白者』の3本。

過去の助成作品としては、横浜聡子監督『ジャーマン+雨』、石井裕也監督『ガール・スパークス』、板倉善之監督『にくめ、ハレルヤ!』、石原貴洋監督『バイオレンスPM』、小栗はるひ監督『どんずまり便器』、リム・カーワイ『新世界の夜明け』など。
今夏劇場公開待機作品は、大江崇允監督『適切な距離』、今泉かおり監督『聴こえてる、ふりをしただけ』(第62回ベルリン国際映画祭正式招待部門ジェネレーションKプラス/子供審査員特別賞)。

(聞き手:デューイ松田=松田
(富岡邦彦=富岡

CO2オーディションの流れ

松田
富岡さんが事務局長に復帰されて2回目のCO2となりましたが、キャストのオーディションはどのように行われましたか?
富岡
200人から300人くらいかな?CO2ワークショップ生やインターンを中心に総合のオーディションをしました。どれがどの枠と決め込まずに、脚本もまだ完成していない段階ですね。完成前の脚本の一部を読んでもらったりしましたね。
その後脚本が上がって、役名が付いた段階で関西の事務所を中心にFAX等で案内を入れてシアターセブンで一日かけて助成監督3組合同でオーディションをやりました。 そこから先は脚本を固めた段階で各組個別にオーディションしたり、各組が劇団関係を当たったりしてましたね。
松田
脚本が固まってない段階でのオーディションと聞くと非常に漠然としているように感じますが。
富岡
普通は脚本が決まってからですよね。でも決まっていない段階だと、面白い人がいたらそれに沿って変更を加えたり、監督側がどういう人を求めているか具体化すると言う意味でも有意義なんです。漠然としたイメージとか、言葉で説明しきれないことを具体化して脚本にフィードバックできる。作り手がインスピレーションを受けたら話の方向が広がることもあるんです。それで最初の段階でオーディションをやった訳です。
松田
なる程、オーディションは単に役に合う人を探すだけではなく、制作の側にはイメージの具体化という側面もあるんですね!
富岡
そうですね。例えば『ばかのハコ船』では、元々主人公の恋人・久子をコロッとした丸っこい人として募集したんですよ。ところが別の役で来ていた細長くて縦長の顔をした小寺智子さんがよくて、当てはめてみると「いけるよね!」ってことになって結果的にうまくはまった訳です。
あまり外見のイメージを固めてしまうと募集する方もオーディションで損をすることはあると思いますよ。

書類選考はどこを見る?

松田
通常はオーディションに至るまでに書類選考があると思いますが、富岡さんの場合はどのポイントで選考していますか?
富岡
事務所に属している人は、プロフィールにアルバイトのことは書かないよう指導されてるみたいだけど書いたほうがいいね。困るのはこれまでの出演作としてエキストラで参加していてもビッグタイトルの名前を書いていること。あとは写真がキレイ過ぎることかな。グラビアみたいな写真を貼られても、映画の場合はキレイすぎると役に当てはめにくいから、スナップを貼り付けたほうがいいと思う。実際会ってみるとあまりに感じが違っていたり落差が大きいことが多い。落差を超えるだけの演技力があれば問題ないけどね。
松田
自己アピールに書かれている内容に関してはいかがですか?
富岡
「いつも元気です」とかそういうのが多いけど、どういう俳優のどんな演技に惹かれるとか、その映画に生かせる特技とか具体的なものが書かれていると興味は持ちますよね。1次に通るために、その映画に合わせてプロフィールや自己アピール、特技を全部変えるくらいの工夫はした方がいいよね。アメリカなら演技の指導とは別にオーディションに受かるためのワークショップがあるらしい。実力があってもその場に立てなければチャンスはない訳ですからね。

服装もアピールの1つになる

松田
オーディションに来るときの服装なんかは見られますか。
富岡
女性はきれいな格好して来ることが多いけど、事前の情報の中である程度想像して衣装もそれぞれ考えて来るといいよね。もちろん本当の衣装は後で決まるけど、これもアピールの1つになる。スーパーのおばさん役を募集しているのにスーツで来られてもそこから想像するのは大変だから、普段はキレイでもノーメイクでおばさん風にして来る。そんな考え方がオーディションに通るための知恵として必要でしょうね。
松田
面接の中で演技したとたん変わるのではダメですか。
富岡
もちろんそこまで自信のある人はいいですよ。それはやっぱりベースがあってのことなので。

オーディションに臨む際の意識

松田
以前日本在住の外国人を対象にしたオーディションをされたそうですね。
富岡
アメリカの大学の先生が映画を撮ることになって募集したんです。全国から集まった人たちは、日本に住んでいて様々な仕事をしている訳です。英会話の先生だったり昔ちょっと役者をやったことがありますって人たち。30分前に来てもらって1、2ページくらいの台本の一部を渡したんだけど、日本人の場合は「見ながらやっていいですか」って人が多いんですね。外国の人たちはほとんどがプロの役者でもないのに全部30分で覚えて、その上でどう動くか考えて臨んでくる。これには驚きましたね!オーディションではそうするものだという認識の違い、差を感じましたね。これはオーディションに臨む際の心構えとして非常に参考になるエピソードだと思いますよ。

富岡邦彦さん

どんな視点で審査するか

松田
さて、実際のオーディションについて詳しく伺っていきます。固まっていない段階でオーディションをする時はどこにポイントを置きますか?
富岡
例えば一番分かりやすいのは、怒るシーンを提示して、「こういう感情をあなたは理解できますか?」と、本人が何を持っているか見ていきます。
今回の例では、安川組でそういうシーンがあることを想定していて、「ここにこういう人がいるからアドリブで烈火のごとく怒ってください」というのをやりました。その段階で皆さん何かを想像して怒るわけですが、男女とも...特に女性が多かったけど、お母さんとの関係で喧嘩になって怒る、彼氏との関係で怒るというのを想定して最後は何故か泣くんです。「どうして分かってくれないの?」
松田
気持ちが通じないもどかしさで泣いてしまうんですね。
富岡
こちらとしては、全くの他人にコンビニで不愉快なことがあってキレるとか。そういう「怒る」をやって欲しかった。そこを誤解して自分の中だけで想像すると別の感情が出てきて最後は泣いてしまう。それを期待したと思われたかもしれないけど、皆パターンが近くなっちゃうよね。普段怒るってことがないんだなって思いますね。時代によっては現状に対して凄く怒っている人もいる訳だけど、今は平和だから親にも怒られたことがないし、怒るって感情をみんな避けて通っているのを感じましたね。

設定の理解とリアクション

松田
同じ反応が多かったということは自分に近いものしか出なかったということですか。
富岡
そうでしょうね。逆に監督もそういうものを求めてしまいがちだけど、演技っていうのと違う。素でイメージに合う人を探すってことになるから。長編になるとその登場人物がどう変化していくのかを見せることになる。天然の人は脇でポイントとして置くのはありだと思うけど、出て来る度に同じでは主役はできないよね。主役は脚本をしっかり読め、背景に対してのリアクションがきちんと出来る人になる。人は相手によってリアクションを変えるものだから。僕の今のしゃべり方もあなたと話しているときと事務局スタッフとでは絶対違う。あなたもそうでしょ。そういった違いを踏まえて、設定が分かった上で反応出来ているかどうかを見ますね。
松田
そこを見極めるのにはどんな質問をされましたか。
富岡
基本的にはこれまで演技に関してどういうことをしてきたか。簡単なキャリア、もう1つは映画やドラマで誰のどんな演技にどう惹かれたか。これは聞いてみると大概の役者さんが答えられない。「柴咲コウが好きです」「松山ケンイチが好きです」とかは答えるけど、役者の好き嫌いを聞いているのではなく、演技者として「このシーンのこういう状況でこういう顔したからいい」「これは自分の発想にはなかった」とか、分析してほしいんですよ。
個人的な体験談も聞きますね。今までで一番辛かったこと。みんななかなか言わないけど、人前で裸になる――物理的にではなく、自分の感情をさらけ出せるかどうかは役者として重要ですよ。

アルバイト経験は役者にとって大きな財産

松田
先ほど書類選考のことで、プロフィールにアルバイト経験を書いた方がいいというお話が出ましたが、これは何故ですか?
富岡
事務所側はイメージが付くのを嫌うんでしょうけど、これは聞き出しますね。マクドナルドでバイトしていればそういう役が出来るし、ショップ店員、工場で何か作っている、看護婦とかなんでもいい。その世界を知っているということだから、その人にとっては財産ですよ。
そこにはどんなルールがあって世界が成立しているのかで、口の聞き方も違う。それを知っているかどうかは強みですよね。
普段街で、カフェにいるカップルの会話とか、女の子同士が噂している様子なんかも聞いた方がいい。自分の日常と違うところでこんな価値観で動いている人がいて、この人はこういう話し方をするんだって、盗んで頭に入れていくのは大事ですよね。

他人にとっての自分を自覚することで演技が広がる

松田
役者以外の日々の体験は無駄ではなく、むしろ重要になってくるんですね。
富岡
色々なアルバイトをして自分の中にプールしている人はそういう引き出しがある。リアルな自分と自分が演じる役との距離も分かっていて、それを見せるために自分はどう動いたらいいのか、どういう表情をすればいいのか分かっている人は魅力があります。
普段自分が他人からどう見られているのかわかっていない人も多いんですよ。
例えばさっき、あなたがしまだゆきやすくんの『フェリーニの京都』を観て、長宗我部陽子さんを口説く坊さんの役で出演している僕を「いかがわしかった」と言ったよね。普段いかがわしいとかスケベなおじさんと見られているのも僕は自覚している(笑)。そういうイメージが邪魔な場所ではそう見えないように振舞うし、スケベなおじさんの方が親近感を持って接してくれる場所ではそれを前面に出す。だからどう見られているか自覚するのも大事なんですよ。
松田
そういった質問をしたときの皆さんの反応はいかがですか。
富岡
かっこ括りにしている人が多いよね。自分は「自分」、演技は「演技」。だから自分で飲み込めて演技出来てないのは顔に出ますね。分かってない人は型で演じてしまうから面白くない。素で面白いというのがベースにあっても「作っていく」という作業は結構難しいと思います。限られた時間のオーディションで全部見られる訳ではないけど、そこを出してくれる人は面白いし、いつもそういう出会いに期待しています。
松田
ありがとうございました。

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